Twitterによるネットコミュニティの変質について。あと、はたらきたくないでござる

これまでのインターネットって、基本的に、自分が登録したブラウザのお気に入りを適当に巡回していくようなスタイルだったじゃないですか。ニュースサイトやRSSの存在がある程度潤滑油の役割を果たしてはいたかもしれないけれど、新たにおもしろいサイトを知るためにはある程度能動的に情報を仕入れる必要があったし、自分の所属する情報クラスタのようなものは固定的だった。

そしておもしろい人や才能を持った人ってのは、オンライン・オフライン問わずに当時もたくさん居ただろうけど、小規模コミュニティにそれぞれ定住しているような感じだったと思います。分かってくれる人や身内だけに見せて、ウケたらそれでまあ満足、みたいな。

でも、RSSソーシャルブックマークの次にTwitterTumblrが出てきた。これは陳腐な表現だけれど、テクノロジーの進歩とインターネットの一般化によって、もはや誰もが簡単に世界へ情報発信できる世の中になった。こいつらって情報がねずみ算式に広がっていくから、おもしろいことやってる人とか、おもしろい発言だとかがとても注目されやすくなった。

そうなってくると、おもしろいことを人に見せておもしろがってもらいたい人たちは、どんどん外に出ていっちゃいますよね。ニコ動に自分のボカロ音楽をアップしたりとか、Pixivに絵を投稿したりとか、Ustreamでライブやって曲を買ってもらったりとか。アプリのソースコードだって、githubで簡単に共有できるし。そして、TwitterTumblrがうまい具合にこれらのWebサービスのハブになっていて、沢山ある中から特におもしろいやつをピックアップして、横断的にどんどん広めてくれる。Twitterで1000人単位のフォローしてると、その中には当然いろんなコミュニティに属しているいろんな人がいて、それぞれの情報を流してくれるから、情報は偏りづらいです。こういう世の中の流れって、すごく歓迎すべきことだと思います。

集団に所属してその集団の人達と時間を共有するうちに、自分の考え方も自然と影響を受けてくるのですが、集団の内部にいると自分の変化に案外気付かないものです。これが結構怖いことで、多くの人はふと気がつけば良くも悪くもその集団/組織の価値観に染まっているわけですね。どんなに多様な人を集めたり、色々な活動をしている組織であっても、組織である以上ある程度視野は狭くならざるをえないと僕は思っています。


これから大学に入学する新入生のために - インテリすもうとりあるいは童貞研究家

ここまで書いて、このエントリを思いだしました。Twitterやニコ生、Ustに企業が徐々に乗り出してきてますし、インターネットの世界でのこの変化が、実社会にも波及して、今後ライフスタイルの変化を呼ぶのではないかと思ってます。ベーシック・インカムの議論なんかもそうですけど、例えば一般の会社員が複数の勤務先で働くのが普通になったり、サラリーマンとしての勤務は週2〜3日で残りは何か絵なり文章なりアプリ開発なりのクリエイティブな活動をし、ユーザーから直接お金をもらう、みたいな生き方を選べる世の中にならないかなあ、と夢想してます。コンテンツ業界におけるCtoC課金のビジネスモデルが整うのもそう遠くないと思ってます。

1990年代半ば、Microsoftは Encartaという百科事典を作り始めました。適切なインセンティブを設定しました。何千という専門家にお金を払って記事を書いてもらいました。たっぷり報酬をもらっているマネージャが全体を監督し、予算と納期の中で出来上がるようにしました。何年か後に、別な百科事典が開始されました。別なモデルを採っていました。楽しみでやる、1セント、1ユーロ、1円たりとも支払われません。みんな好きだからやるのです。


ほんの10年前に、経済学者のところへ行ってこう聞いたとします。「ねえ、百科事典を作る2つのモデルを考えたんだけど、対決したらどっちが勝つと思います?」 10年前、この地球上のまともな経済学者で、Wikipediaのモデルが勝つという人は 1人もいなかったでしょう。


これは2つのアプローチの大きな対決なのです。モチベーションにおけるアリ vs フレージャー戦です。伝説のマニラ決戦です。内的な動機付け vs 外的な動機付け。自主性・成長・目的 vs アメとムチ。そしてどちらが勝つのでしょう? 内的な動機付け、自主性・成長・目的がノックアウト勝利します。まとめましょう。


やる気に関する驚きの科学 (TED Talks) - TED

内的な動機付けによってしかおもしろいものや革新的なものは産まれ得ないので、おもしろい人たちや才能を持った人たちにそういう時間を十分に与えてあげて、世界をもっともっと便利で面白くしていけるように早くなりませんかねえ。